ピロリ菌外来
はじめに
わが国の胃がん発生件数は年間約11万人で、男女ともに今も増え続けています。(第1位)
特に50歳代から急速にその数が増えていき、年間5万人の方が胃がんで亡くなっている現状です。(第2位)
皆様の周囲にも胃がんの方がきっと何人かいらっしゃるのではないでしょうか?
この胃がんを予防することが出来たら、多くの人の命が確実に救われることでしょう。
最新の研究で胃がんの原因の95%以上がピロリ菌であると分かった今、1人でも多くの方が検査と治療を受けることをお勧めします。
ピロリ菌とは
胃の病気というとどんな病気を思い浮かべますか?胃潰瘍、胃炎、ポリープ、がん、リンパ腫・・・などなど。
実はこれらの病気のほとんど全てにピロリ菌が関係していたのです!
少し前までは、胃には強い酸性の胃液があるため、細菌などいるはずがないと思い込まれていました。
ところが1982年、オーストラリアの学者たちが胃粘膜に住みついたらせん状の菌を発見し、胃炎の原因であることを証明しました。
この菌は後にヘリコバクター・ピロリ菌と名付けられ、発見者はノーベル医学賞を受賞することになりました。
胃がんとピロリ菌
このピロリ菌をスナネズミに感染させると胃がんが発生することがわかり、また1,500人を10年間追跡した研究ではピロリ菌陽性者の5%から胃がんが発見されたのに対し、陰性者からは1人の発症もなかったことが分かりました。
また、ピロリ菌陽性者を除菌すると胃がんの発生が1/3に減少することも分かりました。
そして1994年にWHOは肺がんにおけるタバコやアスベストと同様に、ピロリ菌を胃がんの『確実な発がん因子』であると認定しました。
ピロリ菌の感染
現在日本人は2人に1人が感染しています。(約6,000万人)殆どの場合、5歳以下に感染していて不衛生な環境のもとで菌が口から侵入すると考えられています。特に60~70歳のいわゆる団塊の世代以前の方は80%近くが陽性です。
衛生状態の良くなった現代の若い人達はずっと少なくなっています。
費用
(1)保険が使える場合…①胃潰瘍・十二指腸潰瘍 ②胃MALTリンパ腫 ③特発性血小板減少性紫斑病 ④早期胃がんに対する内視鏡治療後 の4項目に加え、25年2月から⑤内視鏡検査で診断された胃炎が加わり、保険適用の範囲が拡大されました。
(2)保険が使えない場合…内視鏡検査を受けない、もしくは受けても①②⑤に該当しないときは自費になります。総額でおよそ25,000円(消費税別)です。
- ①はじめの検査…8,000円 (初診料+検査代)
- ②除菌と判定検査…17,000円 (再診料+薬剤料+検査料)
検査・除菌と保険適用の流れ
尿素呼気試験
13C尿素(炭素原子にしるしをつけた尿素)がピロリ菌によってアンモニアと二酸化炭素に変わることを利用し、呼気の中の13Cを測定する方法です。精度が優れていて簡便、約30分で終わります。
除菌
検査が陽性でしたら、次に治療にうつります。
抗菌剤と酸分泌抑制薬を7日間服用します。成功率は約80~90%です。1回で成功しなかった場合は、薬剤を替えてもう1度行います。成功率は約90~95%です。内服治療ですから苦痛はありません。
除菌判定
約6~8週間後に最初に受けた検査をもう1度行います。陰性になっていれば除菌成功です。
よくある質問
- ①除菌したらもうがんにはならないのですか?
- 全年齢を通じて発生の危険を1/3に減らしますが、ゼロにはなりません。感染期間が長いと、除菌の時点で既に微小ながんが発生している可能性があります。
- ②何歳で除菌を受けるのがよいですか?
- 感染期間が長いほど胃炎が進行して胃がんリスクは上昇するので、早いほど良いと考えられています。
- ③子供でも出来るのですか?
- 小児期は再感染率も高いので特別な疾患を除いて余り行われません。しかしながら、将来的には学童期での除菌が検討されています。
- ④除菌したらもう胃の検査はしなくてよいのですか?
- 除菌すると胃の粘膜の状態は回復しますが、高齢になるほどその程度は低いので、胃がんの危険は減ったとはいえなくなったわけではありません。また微小ながんが既に出来ていた可能性もあるので1~2年ごとに定期的に検査することをお勧めします。
- ⑤再感染はありますか?
- 年間1%以下と推測されています。
- ⑥除菌治療中は生活に制限はありますか?
- 薬剤によってはアルコールを控えることが必要になります。
- ⑦検査したら陽性でした。家族も調べた方がいいですか?
- 同じ環境で長い間一緒に暮らしていますので、皆さんで受けましょう。
- ⑧胃を手術しましたが除菌は可能ですか?
- 胃の一部が残っている場合は健常者と同様に除菌します。
- ⑨妊婦は除菌できますか?
- 妊娠中に行う必然性に乏しいので出産してからでよいでしょう。
- ⑩感染しないようにするにはどうしたらいいですか?
- 7割が母から子への感染です。離乳食を噛んで与えたり、口移しに食べさせたりしないようにしましょう。
- ⑪ピロリ菌は胃以外の病気と関連ありますか?
- 特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、慢性じんましんなどに関係します。
おわりに
21世紀になって、日本人の国民病ともいわれた胃がんはようやく原因が突きとめられ、予防が出来る時代になりました。
ピロリ菌の陽性率が約80%と高い中高年世代の皆様におかれましては、是非検査を受け、除菌しましょう。早く除菌するほど胃がんのリスクは低くなります。
このことを知り、私自身も除菌しました。当院のスタッフも25人中12人が陽性でしたが全員、除菌に成功しました。
お申込
受付までお気軽にお問い合わせ・お申し込みください。予約をお受けします。
除菌治療によって
40歳代以下では90%以上、
50歳代では男性で70%、女性で90%、
60歳代では男性で50%、女性で80%、
70歳代では男性で40%、女性で70%の胃がんが予防できると云われています。